リスク許容度がうまく自分に当てはまらなかった話|「ほったらかし投資術」と我が家のバケツ分け家計

投資・資産形成

投資を続けていると、ふと「自分のリスク許容度ってどれくらいなんだろう」と考える瞬間があります。

本を読めば枠組みは理解できる。
だけど、いざ自分に当てはめようとすると、なぜかしっくりこない。
そういう違和感を、長くなんとなく抱えていました。

最近、山崎元さん・水瀬ケンイチさんの「ほったらかし投資術」を読み直して、その違和感の正体に気づきました。

本が間違っているわけでも、自分の理解が足りないわけでもない。
ただ、「家計の設計次第で、適用される枠組みが変わる」というだけの話でした。

今日はそのあたりを、自分の家計のバケツ分けの話と合わせて、整理しておこうと思います。

「ほったらかし投資術」のリスク許容度の枠組み

まず、本の中で紹介されている考え方をざっくり整理しておきます。

山崎元さんは、リスク許容度を「いくらまで損できるか(許容損失額)」という形で考えるべきだとしています。
そして、その許容損失額を、机上の数字ではなく老後の生活費換算で考える、というのが本のひとつの工夫です。

たとえば、こんなふうに考えるそうです。
「老後の生活費が月1万円減っても、自分は耐えられるか?」
「もし耐えられるとしたら、その月1万円を30年分(=360万円)まで損してもいい、と置き換えられる」

ここから逆算して、「最大投資額は許容損失額の3倍」というルールが導かれます。
本の前提は、1年後に投資資産が3分の1(約33%)まで下がる悪いケース、4割増えるよいケース、平均年5%程度のリターンを想定したものです。
許容損失額が360万円なら、最大投資額は約1,080万円が目安、という具合です。

このフレーミングの優れているところ

このアプローチの一番うまいところは、抽象的な「いくらまで損できるか」を、具体的な生活実感に翻訳しているところだと思います。

「360万円損する」と言われても、ピンとくる人は少ない。
でも、「老後の生活費が月1万円減る」と言われると、ぐっと現実味が出てくる。
痛みのスケールが、自分の暮らしのスケールで測れるようになる、ということです。

リスク許容度を、机上の数字ではなく生活感覚で扱えるようにしてくれる。
これは本当によくできたフレーミングだと思いました。

でも、自分に当てはめようとすると違和感があった

ところが、いざ自分に当てはめてみると、どうもしっくりこない。

「老後の生活費が月1万円減っても大丈夫?」と問われても、答えがすっと出てこないんです。
最初は「自分の想像力が足りないのかな」と思っていました。

でも、よく考えてみると、自分の中で違和感の正体が見えてきました。
自分は、投資資産を「老後の生活費の原資」として位置付けていなかったんです。

本の枠組みは、たぶん「投資資産が老後の柱になる」ことを前提に設計されている。
だから、損失を老後の生活費換算で考えることに意味がある。

でも、自分はそこが少し違っていました。
投資資産は、老後の「メインの柱」ではなく、年金や現金と並ぶ「3本柱のひとつ」として位置付けている。
だから、損失が出ても、その全額が老後の生活費の目減りに直結するわけではない。
結果、生活費換算で問われても、自分の中で換算式が成立しない。

これがしっくりこなかった理由だと、ようやく言葉になりました。

我が家のお金のバケツ分け

なぜそうなっているかは、自分の家計の設計の話につながります。

我が家では、現金貯金を「役割」で分けて管理しています。
ざっくり言うと、こんな分け方です。

  • 生活防衛資金:聖域として動かさないお金
  • 目的別資金:車の買い替え、家のリフォーム、教育費など、用途と時期が見えているお金
  • NISA積立資産:当面(数十年スパンで)取り崩す予定がないお金

このバケツ分けの具体的な運用については、お金に役割を与えると家計管理は一気に楽になる|我が家のバケツ分け運用で詳しく書いています。

大学費用などのまとまった支出は、別途現金で積み立てる前提で計画を組んでいます。
だから、NISA資産を取り崩して教育費にあてる、という想定がそもそもない。

このバケツ分けの結果、NISAの評価額が仮に半分(-50%)になっても、家計のキャッシュフローには直接の影響が出ません。
教育費は別バケツで確保されているし、生活防衛資金も聖域として動かさない。
NISAは老後に向けて長期で育てるお金として、当面の取り崩し予定はない前提です。

ちなみに、その「長期で育てる」NISAを、我が家はマネックス証券のdカード積立で運用しています。選んだ理由はマネックス証券NISAの評判|dカード積立で年最大37,200pt還元、デメリット・SBI/楽天比較に書きました。

だから、自分にとってNISAのリスクは、「いくらまで損できるか」ではなく、「いま取り崩す必要があるかどうか」で意味付けされています。
将来は老後の生活費の一部として取り崩していく予定ですが、それは数十年先の話。
短期的に評価額が下がっても、取り崩しタイミングを自分で選べる柔軟性があるから、減ること自体は怖くない。
そういう構造になっていました。

やまげん式と我が家式、どちらも本質は同じ

ここまで書いて思うのは、本の枠組みと自分の枠組みは、別物に見えて、実は本質は同じだということです。

やまげん式:「いくらまで損できるか」を生活実感で測る
我が家式:「いま取り崩す必要があるお金かどうか」で意味付けする

スタート地点は違いますが、行き着く先は同じです。
自分が抱えていいリスクの範囲を、数字ではなく実感として理解すること。

やまげん式は「老後の柱としての投資」という前提から、リスクを生活費に換算して見える化する。
我が家式は「老後の3本柱のひとつとしての投資」という前提から、いま取り崩す予定がないお金として位置付けることでリスクを許容する。

どちらも、リスクを抽象的な数字のままにせず、自分の中に降ろすための工夫です。

大事なのは、自分の家計設計に合った枠組みを選ぶことだと思っています。

投資資産を「老後の柱」とするか、「予備力」とするか

このあたりの分岐は、リスク許容度の議論を大きく分ける気がしています。

投資資産を老後の主柱(生活費の中心)として使う設計なら、やまげん式の「老後の生活費換算」がよく効きます。
損失が起きた時の痛みが、そのまま将来の暮らしの目減りに直結するからです。

一方、投資資産を「老後の柱のひとつ(メインではない)」として位置付けているなら、損失額を生活費換算してもピンとこない。
むしろ、「このお金はいま取り崩す必要があるか?」「短期的に減っても、取り崩しタイミングを後ろにずらせる柔軟性があるか?」という問いの方が、自分の中で腹落ちしやすい。

どちらが正解、という話ではないと思います。
自分の家計設計とセットで考えるべきもの、というだけの話です。

老後資金を投資資産で作っていく人もいれば、現金や年金で作っていく人もいる。
NISAを老後の主柱として頼りにする人もいれば、年金や現金と並ぶ「ひとつの柱」として位置付ける人もいる。
そのどれもが、間違いではない。

本を読んで気づいたこと

「ほったらかし投資術」を読み直してみて、いちばん大きい気づきは、リスク許容度の議論は投資の話だけではない、ということでした。

それは同時に「自分の家計の中で、投資をどう位置付けているか」の話でもある。

だから、本の枠組みをそのまま当てはめようとして違和感があるとき、それは読み手のせいでも、本のせいでもありません。
家計設計が違うから、当てはめる前提がずれている、というだけの話です。

これに気づくと、本の読み方も少し変わります。
「正解」を探すために読むのではなく、「考えるための道具」を借りるために読む。
そうやって読むと、本の中の例えがそのまま自分に当てはまらないことも、気にならなくなります。

「自分にどう当てはめるか」の答えは、本の中にはなくて、自分の家計の中にしかない。
そういうことだと思います。

家計が整ったあとに何を考えるかについては、家計管理の次のステップ|整ったあとに考える4つのことでも整理しています。

まとめ

「ほったらかし投資術」は、投資初心者にも分かりやすく、考え方の整理になる良書です。
山崎元さんのフレーミング(許容損失額を老後の生活費換算で考える、最大投資額は3倍まで)は、抽象的な議論を生活感覚に翻訳する素晴らしい工夫だと思いました。

ただ、その枠組みは「ある前提」のもとで成り立っています。
投資資産を老後の柱として使う、という前提です。

自分の家計設計と照らし合わせて読むと、本の中の例えがそのまま当てはまらないこともある。
それは本のせいでも、読み手のせいでもなくて、ただ家計設計が違うというだけの話。

本を「答え」として読むのではなく、「考えるための道具」として読む。
そうすると、自分の枠組みが少しずつ見えてきます。

我が家にとっては、リスク許容度は「老後の生活費が何ヶ月減ってもいいか」ではなく、「このお金は短期で取り崩す必要があるか、ないか」という問いで整理されました。
それで腹落ちしたなら、それが自分にとっての答えなんだと思います。

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